霊峰と煙突に誘われて、岳南電車をスケッチする②

前回はこちら。

終点の岳南江尾駅に到着。8000形は編成の前後でヘッドマークが異なり、8101号(吉原側)は「富士山の日」仕様でしたが、8001号(江尾側)は大ヒット中のアニメーション「超かぐや姫!」のコラボ仕様でした。
富士地域では、かぐや姫が富士山に登って忽然と消えてしまうという、富士山信仰と絡めた独特の「かぐや姫伝説」が伝承されており、町おこしコンテンツの一つなんだそう。現在、超かぐや姫!の公開に合わせて「富士市×超かぐや姫!スタンプラリー」というタイアップ企画が開催されているのですが、訪問日がその初日だったようです。休日とはいえ、やたら観光客が多かったのはそのためか。
【岳南電車 HP】 https://www.gakutetsu.jp/topics/chokaguyahime_gakunan.html
隣に停泊しているのは、富士山を挟んで反対側の富士急行から2018年に転属してきた9000形。岳南電車は富士急グループ傘下の企業なので、融通が利いたみたいです。さらに辿ると元京王電鉄の5000形であり、岳南電車は二度目のリクルート先になります。 運用上、今回は乗車できず。

ホームから駅舎に向かう通路の途中に、岳南江尾駅の「富士山ビュースポット」があります。
(ちょっと無理ありません…?)

駅前の花壇の片隅に、スイセンが咲いていました。

無人化されて久しいですが、駅舎の中は賑やかで、あまり寂しさを感じません。

危険品に関する、古めかしい注意看板。途中「荷物扱い」という表記がありますが、岳南江尾駅発着の貨物列車が廃止されたのは1984年なので、それ以前からあるということなのか。2026年現在、当駅に駅長はおりませんので、詳細は運転士に尋ねましょう。

「むすび日和」という小規模のマルシェが開かれていました。レモン、ほうれん草、お茶など、地元の農産物を販売しているようです。

こんな店舗も。米麹甘酒ですか。なんぞ美味しそうな。

ペーパーウェイト代わりの石に、かわいらしいイラストが。湘南顔、デフォルメ調でも映えますね。

購入したるは「生姜はちみつ甘酒」。生姜の滋味と米・蜂蜜の甘みが調和して、めちゃ美味い。身体もほどよく温まりました。
「むすび日和」は月に一度、日曜日にオープンしているそうです。次回の開催は3/8(日)。気になる方はお越しになってはどうでしょうか。
次の電車まで時間があるので、一駅分歩いてみましょう。

何の変哲もない道の先に、富士山。

工事用バリケードに、小さく富士山。

信金の看板と本物で、w富士山。

神谷駅。住宅街の只中にある、普通の駅です。キノコ型の屋根もなし。

列車に乗って、次の目的地へ。

下車したのは岳南富士岡駅。駅構内に沿って研修庫があり、岳南電車における重要な駅の一つです。

こじんまりとした庫内には、7000形の片割れ、7003号がお休みしていました。こちらは、京王井の頭線で活躍していた頃の塗装を纏います。

そんな岳南富士岡駅の構内に沿う形で「がくてつ機関車ひろば」があります。駅の側線を利用して、岳南電車の製紙輸送を支えた4輌の電気機関車たちと、2輌のワム車を展示しています。

ED402(奥)とED403(手前)は、岳南電車の主力機関車として本線上で貨物編成を牽引しました。1965年~66年に日本車輌で製造され、当初は松本電鉄(現・アルピコ交通)でダム建設の資材輸送用として活躍していました。ダム完成に伴い仕事の大部分を失ったところで、牽引力の高い電気機関車を探していた岳南鉄道(当時)関係者の目に留まり、1971年に転属。以後、2012年の貨物輸送廃止まで、その任を務め続けました。
なお、ED403は2005年に貨物輸送の荷主であった日本大昭和板紙吉永(現日本製紙)株式会社の特別塗色として、塗色を赤とクリームの2色に変更。晩年には赤色の部分のみ元のぶどう色に戻して運行最終日を迎えましたが、展示にあたって往時の塗装が復刻されています。
パノラミックウィンドウを両サイドに備えた三枚窓と、係員の添乗用に設置されたデッキの組み合わせは、EF67形0番台を彷彿とさせるスタイル。

ED501は入換機関車として、比奈駅構内で貨物編成の入換作業に従事しました。1928年に川崎造船所(現川崎重工)で製造され、上田温泉電軌(現上田交通)、三河鉄道(現名鉄三河線)、名古屋鉄道と転属を繰り返し、1969年に岳南鉄道へ入線。無骨なスタイルに、入換機関車らしい警戒用の黄色い手摺がオツな車輌です。

貨物輸送華やかなりし時代をイメージして。
ED29形1号機は貨物列車の牽引や比奈駅での入換機関車として活躍、後に他の機関車へ役目を譲る形で予備機となりました。日本車輌および東洋電機で製造され、豊川鉄道(現・JR飯田線)、鉄道省→国鉄と移り、1959年に岳南鉄道へ入線した最年長の機関車になります。
これまで紹介してきたように、現在線路上にある岳南鉄道の車両は、旅客用・貨物用含めて全て中古車両となります。歴史を振り返っても、純粋な新製車両は1953年に帝國車輛工業で製造された30t級の箱形電気機関車、ED30形(1973年廃車)の1輌だけとのこと。私事ですが、カメラ製品をいつも中古で購入している身としては、親近感が沸きます。

少し移動して、研修庫を外側から見学。

門扉には岳南電車の社章が。なんとも味わい深い装飾です。「岳」の字を繋ぐ部分の細さを見るに、大事に手入れしないとポロっと取れてしまいそう。

また電車に乗って、本吉原駅に戻ります。気になっていた煙突と、列車を絡めて。

本吉原から岳南富士岡へ。乗車した7001号は「だるま電車」仕様ということでこの賑わい。色とりどりのだるまの折り紙が車内を彩ります。

「だるま電車」というのは、吉原駅から徒歩で15分のところにある毘沙門天で、2月23日から25日(水)にかけて開催される「毘沙門天大祭」を宣伝するラッピングになります。同祭は、東京都の「深大寺だるま市」や群馬県の「高崎だるま市」と並ぶ、日本三大だるま市の一つなんだそう。そんなのあるんだね。「三大〇〇」の世界は広いですね。高崎のだるまは有名ですが、ここ富士市も「鈴川だるま」の産地として知られております。
それにしても、ラブブだるまとは斬新な…。時代を感じます。

さて、富士山を横目に、次の撮影地へ向かいます。(つづく)