残暑厳しい味醂の街で、流鉄線をスケッチする。

2025年9月7日、流鉄流山線撮影のため、JR新松戸駅に赴きました。
私事ですが、8月頭に長年住み慣れた関西を離れ、千葉県で一人暮らしを始めました。しばらくは新天地での生活に慣れる期間に充てようということで、趣味活動はおとなしめにしていたのですが、それから一ヵ月経ち、流石に発作が現れてきまして…。軽いリハビリも兼ねて、どこか気軽に寄ってみようと。
さあ、どこに出かけようか。

そんな訳で訪れたのは、正午過ぎの新松戸。ここに、ローカル鉄道・流鉄線の「幸谷」駅があります。JR新松戸駅の西口とは目と鼻の先なのですが、駅名は違うわ、武蔵野線の高架橋や高層住宅に囲まれて込みごみしているわで、実距離以上の心理的距離感が…。
とりあえず、小道を抜けて駅北側へ向かいます。すると目に飛び込んできたのは、自分好みのナイスな箱庭的景観!人の背丈に満たない絶妙な高さのコンクリ柵が、良い味わいを醸し出しています。ちょうど「なのはな」号が現れました。
「新松戸」改め「幸谷」駅周辺は、今でこそ雑居ビルがひしめく賑やかな地域ですが、かつては「幸谷集落」にぽつぽつと住宅がある以外、だだっ広い田園風景があるだけの土地でした。玉置浩二も裸足で逃げ出すレベル。そんな幸谷も、ご多聞に漏れず高度経済成長期を迎えた東京の後背地として目をつけられ、土地区画整理事業が始まります(1966年~)。新松戸駅が開業し(1973年)、駅南側の地名も新松戸に改称され(1977年)、新松戸という名はじわりじわりと侵食していったのです。余談ですが、1982年の駅移転によって流鉄幸谷駅の所在地は「松戸市新松戸」となったのですが、旧集落の傍に建てられたJR新松戸駅の所在地は、現在も「松戸市幸谷」。まさかの逆転現象が起きています。面白いね。

そんな蘊蓄はさておき、幸谷駅から乗車してみましょう。武蔵野線高架下の踏切を渡ってアプローチするみたいです。こっちのが先輩なのにね…。

間もなく引退を迎える「あかぎ」号の広告ジャック。なんで千葉で「あかぎ(赤城)」なんだと思いましたが、どうやら平和台駅西側に鎮座する赤城山・赤城神社が由来となっているようですね。なんでも、上州赤城山の一部が洪水によって崩れ、どんぶらこと此の地に流れ着いた、という伝説があるそうでして、一説には「流山」という地名のルーツにもなっているんだとか。ある意味、流山に最も縁深いネーミングと言えます。

流山駅に到着です。駅名標こそ最近新調された雰囲気ですが、全体的に素朴な雰囲気がGood。中小私鉄の終着点としてはハナマルです。

駅の先は検車区になっておりまして、現行の5000形「さくら」号と、最近輿入れしてきたJR東海の211系が肩を並べておりました。こうして見ると211系って大柄ですね…。

駅員氏のお見送り。ささやかな規模の鉄道ですが、それを支える鉄道マンの方々の重責は、距離に比例するものではない筈です。

はっ!あそこに見えるパネルには見覚えがあります。あり過ぎます。
そう、彼女たちは流川(流山ではありません。そういう設定です。)が生んだご当地ローカルアイドル「ろこどる」のお二人、宇佐美奈々子さん(右側)と小日向縁さん(左側)であります。皆さんは「ろこどる」知っていますか?え、知らない?こんなブログ見てないでdアニメストアへ直行しましょう。ハートフルで心の底から応援したくなる、私がこの世で一番好きなアイドル作品です(アイマス除く)。アニメの放映から10年以上が経ちましたが、未だに現役なんですねえ。

流山駅の駅舎。構内同様、全体的に素朴な雰囲気の中で、自販機のファンシーなビニール屋根がなんともニクいですね。

ちなみにこの日は、我が阪神タイガースの優勝日でもありました。こういう写真を撮っておくのは大事。

早々に流山に乗り込んだのは、駅近くにある有名なとんかつ屋さんでランチを頂くためだったのですが、なんと臨時休業。仕方がないので、さらに幹線道路を歩き、こちらのカフェ「茶豆蘭」さんへ。オレンジ色の素敵な腰掛エプロンを纏った婦人に案内されて奥の間へ。このお店、めっちゃ間取りが深いです。


チキンソテー、ガーリックシュリンプ、ピスタチオのムースケーキ。どれも美味でございました。皆さんも流鉄を撮影される際には、ぜひ寄ってみてください。

で、このまま撮影に向かっても良かったのですが、完全にスイッチが観光モードに切り替わってしまったので、今度はこちらへ。「流山白みりんミュージアム」です。
流山市の特産「白みりん」をアピールすべく、流山市や流山キッコーマン(旧:万上味醂)協賛のもと、2025年3月にオープンした出来たてほやほやの施設です。入場料は大人300円。白みりんの歴史や製造過程を楽しく学べる展示コーナーに、体験コーナーやキッチンスタジオも併設した次世代型のミュージアム…とのことでしたが、到着した時点(15時前)でキッチンスタジオは既に終了しておりました。残念です。ちなみに、9月の料理は白みりんをふんだんに活かした「みたらし団子」でした。食べたかった…。
こちらの施設、まあノリで入ったのですが、結構良かったです。有料展示室に関しては1時間刻みのツアー形式で巡っていくため、必然的に1時間で周回できる程度の展示量となるのですが、白みりんの歴史、製造法、こぼれ話などが綺麗にまとまっており、見易かったですね。
(ちなみに流鉄線は、白みりんの貨物輸送も担っていました。専用の引き上げ線が流山駅から旧・万上味醂の工場までを結んでおりましたが、トラック輸送の普及に伴い1969年に廃止され、道路に転用されました。実際に歩いてみましたが、緩やかなカーブを描いているなど、分かり易い廃線跡となっています。)
利用客の殆どが家族連れで、独身成人男性が無邪気に散策するには少々厳しい雰囲気でしたが、誰にも劣らぬハートの強さで突撃してよかった(コト起こし並感)。

ミュージアムを出た時点で16時過ぎ。日も傾き始めてしまいましたが、ようやく本題に戻ります。流山駅南側を跨ぐ陸橋から、構内の様子をパシャリ。こじんまりとしています。


沿線の発展具合はまちまちですが、総じて狭隘なスペースを縫うように走ります。

流鉄線唯一の交換駅、小金城趾。ここで張っていれば、運用中の二編成を一挙に収められるというわけ。日没コールドが心配されましたが、なんとか。

発車間際に少し移動して、サイドから。大胆なホワイトラインが目を惹きます。車内は鉄ちゃんだらけでした。

さらに馬橋側へ移動。小金城趾~幸谷間が、一番ローカル然としていました。雲を噛んで淡くなった斜陽に照らされながら、あかぎ号が最後のご奉公を続けます。

幸谷駅付近の雑居ビルに囲まれた沿線風景は昼間にも撮りましたが、薄暮のそれもなかなか良いですね。

幸谷/新松戸を散策して感じたのですが、ベトナム料理店がやたら多いですよね。沿線にも1軒ありました。今回は時間の問題で立ち寄れませんでしたが、次回来る時があれば食べてみようかな。

本当にささやかな風景ですが、それが年々味わえなくなっているのが現実。しっかり、目に焼き付けましょう。

マンション下の幸谷駅。最後に「らしい」風景と絡めて、流鉄線を後にしました。(おしまい)